経済危機発生時、手元のお金はどうする?初心者向け現金・預金の基本と注意点
経済危機に備える:手元のお金と預金の正しい知識
経済危機という言葉を聞くと、漠然とした不安を感じる方は少なくないでしょう。「今持っているお金はどうなるのだろう?」「銀行から引き出した方が良いのだろうか?」といった疑問を持つかもしれません。
この経済危機ガイドでは、経済危機が発生した、あるいはその兆候が見られた場合に、あなたが持っている現金や銀行預金についてどのように考え、行動すべきか、基本的な知識と注意点を初心者向けに解説します。冷静に状況を判断し、適切な対応を取るための参考にしてください。
経済危機が「お金」に与える影響とは?
経済危機が発生すると、私たちの身近なお金を取り巻く環境にも様々な変化が起こり得ます。
- 物価の変動(インフレ・デフレ): 経済状況によっては、物価が大きく変動することがあります。急激なインフレーション(物価上昇)が起きれば、現金の価値は実質的に目減りします。逆にデフレーション(物価下落)が起きることもあります。
- 金融機関への信用不安: 経済危機が深刻化すると、一部の金融機関の経営状況が悪化し、預金者の中に不安が広がる可能性があります。これが取り付け騒ぎ(多くの預金者が一斉に預金を引き出そうとすること)につながることも理論上はあり得ます。
- 経済活動の停滞: 企業の業績悪化や失業者の増加などにより、社会全体のお金の流れが悪くなることが考えられます。
こうした変化の中で、「手元に現金を置いておくべきか」「銀行預金は安全か」といった疑問が生まれるのは自然なことです。
手元に現金を置くべき?メリット・デメリットと適切な金額
経済危機発生時に「とにかく現金を確保しておこう」と考える方がいるかもしれません。手元に一定の現金を置いておくことにはメリットとデメリットがあります。
メリット:
- 即時性: ATMが混雑したり、キャッシュレス決済が一時的に利用できなくなったりした場合でも、すぐに必要な支払いができます。
- 心理的安心感: 不測の事態に備えて、手元に現金があるというだけで安心できる場合があります。
デメリット:
- 盗難・紛失のリスク: 自宅などに多額の現金を置いておくと、盗難や火災、災害などによる損失のリスクが高まります。
- インフレによる価値目減り: 物価が上昇する(インフレ)局面では、現金のまま置いておくと実質的な価値が減少します。
- 利息がつかない: 銀行預金とは異なり、現金には利息がつきません。
適切な現金保有額の考え方:
非常時に備えて、ある程度の現金を自宅に置いておくことは有効な対策の一つです。ただし、多すぎるとリスクが高まります。一般的には、数日〜1週間程度の生活費を目安にするのが現実的でしょう。これ以上の金額は、後述する生活防衛資金として銀行に預けておく方が安全かつ効率的です。具体的な金額は、ご自身の支出状況や家族構成によって調整してください。
銀行預金は安全?ペイオフ制度(預金保険制度)を知る
「銀行が破綻したら、預けていたお金は戻ってこないのでは?」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、日本の銀行預金は「預金保険制度」によって守られています。この制度は、万が一金融機関が破綻した場合に、預金者を保護するためのものです。
ペイオフ制度とは?
預金保険制度では、預金の種類に応じて保護される範囲が定められています。このうち、多くの普通預金や定期預金が対象となるのが「ペイオフ」と呼ばれる仕組みです。
ペイオフでは、1金融機関につき預金者1人あたり、元本1,000万円までとその利息が保護されます。これを超える部分については、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われますが、全額が戻ってくる保証はありません。
対象となる預金の種類(主なもの):
- 普通預金
- 定期預金
- 決済用預金(無利息、要求払い、決済サービスを提供できるという3条件を満たすもの。全額保護対象)
対象外となるもの(主なもの):
- 外貨預金
- 譲渡性預金
- 元本保証のない金融商品(投資信託など)
あなたが普段利用している普通預金や定期預金であれば、多くの場合1,000万円までは保護されると考えて良いでしょう。ただし、複数の銀行に分散して預けておけば、それぞれの銀行で1,000万円までが保護対象となります。(この概念は、図解で示すとより理解しやすいでしょう。)
経済危機時でも、一般的な預金であれば預金保険制度によって一定額まで保護されるため、必要以上に不安になる必要はありません。むしろ、多額の現金を自宅に置くよりも、銀行に預けておく方が盗難・紛失のリスクを避けられます。
キャッシュレス決済はどうなる?現金との使い分け
近年普及しているキャッシュレス決済(クレジットカード、デビットカード、電子マネー、スマホ決済など)は、経済危機時にも通常通り利用できる可能性が高いですが、例外も考えられます。
- 通信障害: 大規模な災害やインフラへの影響が発生した場合、一時的に通信障害によりキャッシュレス決済が利用できなくなる可能性があります。
- 運営会社の信用不安: キャッシュレス決済サービスの運営会社に信用不安が発生した場合、利用に影響が出る可能性もゼロではありません。ただし、多くの主要なサービスは安定した大手企業が運営しています。
経済危機発生時にも慌てないためには、現金とキャッシュレス決済を状況に応じて使い分ける準備をしておくことが賢明です。普段からキャッシュレスをよく利用している方も、いざという時のためにある程度の現金を準備しておくと安心でしょう。
冷静に対応するために重要なこと
経済危機のような不確実性の高い状況下では、情報の洪水に流されたり、根拠のない噂に惑わされたりしがちです。手元のお金について冷静に対応するためには、以下の点を心がけましょう。
- 信頼できる情報源を確認する: 政府、日本銀行、金融庁など、公的機関の発表や大手メディアの情報を確認するようにしましょう。SNS上の未確認情報に飛びつかないことが重要です。(動画で公的機関のウェブサイトの確認方法などを見せると読者は安心するかもしれません。)
- パニックにならない: 多くの人が不安になると、根拠なく一方向に動いてしまいがちです(例:ATMに殺到するなど)。個人の行動としては、冷静に状況を判断し、長期的な視点を持つことが大切です。
- 基本的な家計管理を続ける: 経済危機であろうとなかろうと、収入と支出を把握し、無駄遣いをなくすという家計管理の基本は揺るぎません。こうした日々の習慣が、不測の事態への一番の備えとなります。
まとめ:経済危機発生時、手元のお金と預金への備え
経済危機が発生した際、手元のお金や銀行預金について考えるべきポイントを改めて確認しましょう。
- 手元に置く現金は、盗難・紛失リスクやインフレリスクを考慮し、必要最低限(数日~1週間程度の生活費目安)にとどめる。
- 銀行預金は、ペイオフ制度により1金融機関あたり1,000万円までとその利息が保護される。過度に不安になる必要はない。
- キャッシュレス決済も活用しつつ、通信障害なども考慮して現金との使い分けができるように準備しておく。
- 何よりも、信頼できる情報に基づいて冷静に行動することが重要。
経済危機は不確実な状況を生み出しますが、基本的な知識を持ち、落ち着いて対処することで、あなたのお金を守ることができます。日頃から家計管理を意識し、不測の事態に備える習慣をつけておくことが、最も確実な危機管理と言えるでしょう。