【経済危機対策】「手取り」が減る前に知りたい!税金・社会保険料の基本と対策
経済危機は、私たちの収入に様々な影響を与える可能性があります。勤務先の業績悪化による給与カット、残業代の減少、ボーナスの削減、あるいは雇用そのものの不安定化など、想像するだけで不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、収入が減るという影響だけでなく、実は「手取り」が想像以上に少なくなる可能性があることにも注意が必要です。収入から差し引かれる税金や社会保険料の仕組みを知り、それにどう備えるかを知っておくことは、経済危機を乗り越える上で非常に重要になります。
この記事では、経済危機が起きたときに「手取り」がどうなる可能性があるのか、その基本的な仕組みを分かりやすく解説します。そして、手取りを守るために私たちが「今から」できること、そしてもし実際に収入が減ってしまったときに「何ができるか」について、具体的な対策をご紹介します。
経済危機と「手取り」の関係:収入が減っても手取りが減りやすい理由
まず、私たちの給与から「手取り」になるまでに何が引かれているのかを確認しましょう。主に以下のものが挙げられます。
- 税金:
- 所得税:1年間の所得に対してかかる税金です。毎月の給与からは概算額が源泉徴収され、年末調整や確定申告で調整されます。
- 住民税:住んでいる自治体に納める税金です。前年の所得に基づいて計算され、翌年の6月から翌々年の5月にかけて納めます。
- 社会保険料:
- 健康保険料:医療費の負担を軽減するための保険料です。
- 厚生年金保険料(会社員・公務員など):将来受け取る年金のための保険料です。
- 雇用保険料:失業した際に給付を受けたり、教育訓練の支援を受けるための保険料です。
- 介護保険料(40歳以上):介護が必要になった際にサービスを受けるための保険料です。
これらの税金や社会保険料は、収入(正確には標準報酬月額など、計算の基になる金額)に基づいて計算されます。経済危機によって収入が減ると、所得税や雇用保険料などはある程度連動して減少する可能性があります。
しかし、注意が必要なのは住民税と社会保険料の一部です。
- 住民税: 前年の所得に基づいて計算されるため、たとえ今年収入が大幅に減ったとしても、翌年の住民税額は前年の高い収入に基づいた金額になる可能性があります。
- 社会保険料(健康保険、厚生年金など): これらの保険料は、「標準報酬月額」という、給与を一定の幅で区分した金額に基づいて計算されます。短期間で給与が多少変動しても、標準報酬月額が変わらない限り、保険料は変わりません。大幅な収入減が一定期間続かないと、保険料に反映されにくい仕組みになっています。
このため、経済危機で収入が減り始めても、すぐに税金や社会保険料の負担が軽くなるわけではありません。その結果、収入の減少幅に対して、手取りの減少幅の方が大きくなる、つまり生活がより厳しくなる可能性があるのです。
(※この概念は、図解で示すとより理解しやすいでしょう。収入総額から税金・社会保険料が差し引かれ、手取りになる流れや、前年所得に基づく住民税の影響など。)
経済危機発生「前」に備える:手取りを守るための対策
「手取りが減るかもしれない」というリスクに備えるために、経済危機が発生する前、あるいは兆候が見られる段階でできることがあります。
1. 徹底した家計の見直しと「手取り」ベースでの予算管理
まずは現在の家計を正確に把握することが第一歩です。収入が減る可能性を考慮し、今の支出に無駄がないか徹底的に見直しましょう。
- 固定費の削減: 家賃(住み替えの検討)、通信費(格安SIMへの変更)、サブスクリプションサービス(不要なものの解約)、保険料(内容の見直し)などは、一度見直せば継続的な節約につながります。経済危機で収入が減った場合、これらの固定費が重くのしかかる可能性があります。
- 変動費の見直し: 食費、水道光熱費、趣味・娯楽費なども、予算を決めて管理することで支出を抑えられます。
重要なのは、将来的に手取りが減る可能性を視野に入れ、「手取り額の〇割で生活する」「最低限この手取りがあれば生活できる」といった具体的な目標を持って予算管理を行うことです。家計簿アプリなどを活用して、日々のお金の流れを「見える化」しましょう。(※家計簿アプリの具体的な活用ステップなどは、別の記事で詳しく解説しています。)
2. 生活防衛資金の確保
収入が途絶えたり大幅に減少したりした場合に、当面の生活費を賄うための「生活防衛資金」を準備しておくことは、経済危機対策の基本中の基本です。一般的に、手取り月収の3ヶ月~6ヶ月分が目安とされています。この資金は、すぐに引き出せる普通預金などに置いておきましょう。
3. 知っておきたい!所得税の負担を軽減する仕組み
会社員の場合、所得税の計算は会社が行う年末調整で完結することが多いですが、自分で確定申告を行うことで、所得から差し引かれる「所得控除」を適用し、税金負担を軽減できる場合があります。
- 社会保険料控除: 支払った社会保険料は全額所得から控除されます。給与天引き分だけでなく、自分で国民年金保険料などを支払った場合も対象です。
- 生命保険料控除・地震保険料控除: 加入している保険に応じて一定額が控除されます。
- 医療費控除: 1年間に一定額以上の医療費を支払った場合に控除を受けられます。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金: iDeCoに拠出した掛金は全額所得控除の対象となります。老後資金の形成と同時に節税効果も得られます。(※ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、生活防衛資金とは別に検討が必要です。)
- ふるさと納税: 応援したい自治体に寄付をすることで、寄付金額の一部が所得税や住民税から控除・還付される制度です。実質2,000円の自己負担で地域の特産品などを受け取ることができます。
これらの制度を知っておき、該当するものがあれば活用を検討することは、平時から手取りを増やす(税金負担を減らす)ことにつながり、経済危機時の家計のゆとりにつながります。
経済危機発生「後」:収入が減ってしまったら何ができるか
もし実際に経済危機の影響で収入が減ってしまい、手取りが厳しくなった場合に取れる具体的な行動をご紹介します。
1. 公的な相談窓口を活用する
一人で抱え込まず、まずは専門の相談窓口に相談しましょう。
- 税金に関する相談: 居住地の税務署や自治体(住民税)の窓口に相談できます。収入が著しく減少した場合など、一定の要件を満たせば、所得税や住民税の減免や猶予を受けられる可能性があります。
- 社会保険料に関する相談: 年金事務所(厚生年金、国民年金)や加入している健康保険組合、あるいは自治体(国民健康保険)の窓口に相談できます。国民年金保険料や国民健康保険料には、収入減に応じた免除・猶予制度があります。会社員の場合でも、傷病手当金や育児休業給付金など、もしもの時のための社会保険制度があります。
- 総合的な生活相談: 各自治体には「生活困窮者自立支援制度」に基づく相談窓口が設置されています。家計相談だけでなく、就労支援や住居確保給付金など、様々な支援情報を提供しています。
(※動画で各相談窓口の探し方や、電話相談の流れなどを解説すると、読者は安心して最初の一歩を踏み出せるかもしれません。)
2. 家計のさらなる見直しと支出の優先順位付け
収入が減ったという現実に合わせて、家計をもう一度厳しく見直します。
- 必要不可欠な支出(家賃、水道光熱費、食費など)を最優先にし、それ以外の支出(外食、趣味、被服費など)は可能な限り削減します。
- ローンやクレジットカードの支払いが厳しくなった場合は、滞納する前に金融機関に相談しましょう。返済計画の見直しに応じてくれる可能性があります。(※ローン・借金返済に関する詳しい情報は別の記事をご参照ください。)
3. 公的な支援制度の活用を検討する
前述の生活困窮者自立支援制度以外にも、国や自治体は経済的に困窮した人向けの様々な支援制度を用意している場合があります。住居確保給付金、失業給付(雇用保険)、職業訓練支援など、状況に応じて活用できる制度がないか、自治体のウェブサイトや窓口で確認してみましょう。(※経済危機で使える公的支援と無料相談窓口について、別の記事で詳しく解説しています。)
まとめ:漠然とした不安から具体的な対策へ
経済危機は誰にとっても不安なものです。特に、収入が不安定になることへの懸念は大きいでしょう。そして、収入が減るだけでなく、税金や社会保険料の仕組みによって手取りがさらに圧迫される可能性があることを知っておくことは、現実的な備えをする上で非常に重要です。
ご紹介したように、経済危機に備え、そして実際に直面したときに手取りを守るためには、以下のステップが役立ちます。
- 平時から家計を正確に把握し、無駄を削減する。
- 万が一に備え、生活防衛資金を確保する。
- 税金や社会保険料の基本的な仕組みを知り、利用できる控除や制度を確認しておく。
- 収入が減ってしまった場合は、一人で悩まずに公的な相談窓口を積極的に活用する。
漠然とした不安を感じている方は、まずは家計の見直しから始めてみましょう。そして、税金や社会保険料がどのように計算されているのか、自身の給与明細を確認することもお金の管理の第一歩です。
経済危機という困難な状況でも、適切な知識と準備があれば、冷静に対応し、家計への影響を最小限に抑えることができます。この記事で得た情報が、あなたの経済的な安心に繋がる一助となれば幸いです。