【経済危機】もし会社を辞めたら?若手社会人が知っておきたい「失業給付」と生活支援制度
経済危機が発生すると、企業の業績が悪化し、雇用情勢が不安定になることがあります。もしもの時に、収入が途絶えてしまったり、会社を離れることになったりした場合、どのように生活を維持すれば良いのか、漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
特に、契約社員などで将来の安定に不安を感じている若い世代の方にとって、経済的なセーフティネットとなる制度を知っておくことは非常に重要です。ここでは、経済危機によって失業した場合に利用できる「失業給付」(雇用保険の基本手当)の仕組みと申請方法を中心に、生活を支えるための公的な支援制度について、初心者にも分かりやすく解説します。
経済危機と雇用不安
経済危機は、時に企業経営に大きな打撃を与え、リストラや倒産といった形で雇用に影響を及ぼすことがあります。突然の失業は、収入の途絶という直接的な経済的ダメージだけでなく、精神的な負担も大きくなります。しかし、このような「もしも」の事態に備える公的な制度があります。それが雇用保険の「基本手当」、いわゆる「失業給付」です。
失業給付は、雇用されていた方が離職し、働く意思と能力があるにもかかわらず仕事が見つからない場合に、再就職までの生活を支えるために支給されるお金です。経済的な不安を和らげ、落ち着いて次の仕事を探すための大切なセーフティネットと言えます。
失業給付(雇用保険の基本手当)の基本
失業給付は誰がもらえる?受給要件を確認
失業給付を受け取るためには、いくつかの要件を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです。
- 雇用保険に加入していた期間があること: 離職日以前2年間に、被保険者期間(雇用保険に加入していた期間)が12ヶ月以上あることが原則です。ただし、倒産や解雇など会社の都合で離職した場合(特定受給資格者)、または正当な理由のある自己都合退職の場合(特定理由離職者)は、離職日以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば良いとされています。
- 現在、「失業の状態」であること: 働く意思と能力があるにもかかわらず、仕事が見つからない状態であること。単に仕事をしていないだけでは受給できません。
- 積極的に求職活動を行っていること: ハローワークに通う、求人に応募するなど、積極的に仕事を探していることが必要です。
ご自身の雇用保険の加入状況は、給与明細や雇用契約書、会社から発行される書類などで確認できます。不明な場合は、会社の担当部署に問い合わせてみましょう。
いくら、いつから、どのくらいの期間もらえる?
- 給付額: 離職前の賃金(給料)のおおよそ50〜80%程度が日額として計算され、原則として4週間に一度まとめて支給されます。賃金の低い方ほど、賃金に対する給付率が高くなる仕組みです。具体的な金額は、離職時の年齢や賃金によって異なります。
- いつから: 会社を辞めた日の翌日から7日間は「待期期間」として、給付は行われません。その後、離職理由に応じて「給付制限」がある場合があります。自己都合退職の場合、待期期間満了後さらに2ヶ月または3ヶ月の給付制限期間が設けられるのが一般的です。(2020年10月以降、自己都合退職の給付制限期間は原則2ヶ月に短縮されましたが、過去5年間に2回以上自己都合退職で受給している場合は3ヶ月となることがあります。)会社の都合(倒産・解雇)で離職した場合は、給付制限期間はありません。待期期間満了後すぐに給付の対象となります。
- 給付期間: 離職理由、離職日時点の年齢、被保険者期間によって、90日~360日の間で決められています。被保険者期間が長いほど、また会社の都合での離職であるほど、給付期間は長くなる傾向があります。
失業給付の申請から受給までの流れ
失業給付を受け取るためには、原則としてハローワークで手続きが必要です。大まかな流れは以下のステップです。
- 会社から離職票を受け取る: 会社を辞めた後、概ね10日〜2週間程度で会社から「雇用保険被保険者離職票」などの書類が送られてきます。この書類がないと手続きができません。もし届かない場合は、会社の担当部署に問い合わせましょう。
- ハローワークへ行く: 離職票と必要書類(後述)を持って、住居地を管轄するハローワークに行き、求職の申し込みを行います。この日が「受給資格決定日」となり、この日から7日間の待期期間がスタートします。
- 雇用保険受給者初回説明会に参加する: ハローワークで指定された日時に説明会に参加します。雇用保険の仕組みや手続きの流れ、求職活動の方法などについて説明を受けます。ここで「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付されます。
- 失業認定日にハローワークへ行く: 原則として4週間に一度、ハローワークで指定された「失業認定日」に失業の状態であることの確認(失業認定)を受けます。この際、「失業認定申告書」に求職活動の状況などを記入して提出する必要があります。
- 求職活動を行う: 次の失業認定日までの間に、原則として2回以上(初回受給時は異なる場合があります)の求職活動実績を作る必要があります。求職活動とは、ハローワークでの職業相談や紹介、企業の面接、公的な職業訓練の受講申し込みなどです。単なる求人情報の閲覧だけでは実績になりません。
- 失業給付の入金: 失業認定がされると、概ね1週間程度で指定した金融機関口座に失業給付が振り込まれます。
申請に必要な主な書類
ハローワークでの手続きには、以下の書類などが必要です。
- 雇用保険被保険者離職票(-1と-2)
- マイナンバーカード(またはマイナンバー通知カードと身元確認書類)
- 運転免許証や健康保険証などの身元確認書類
- 印鑑(シャチハタ以外)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
- 写真2枚(縦3.0cm×横2.5cm)※マイナンバーカードがあれば原則不要の場合あり。事前に確認しましょう。
(この辺りは、動画でハローワークの場所や手続きの流れ、必要書類の具体的なイメージを見せると読者は安心するでしょう。)
失業給付だけじゃない!生活を支える他の支援制度
経済危機による失業は、失業給付だけでは生活費が足りなくなる可能性もあります。そのような場合に検討できる、その他の公的な支援制度も知っておきましょう。
- 住居確保給付金: 離職などにより住居を失った、または失うおそれのある方に、自治体が家賃相当額を一定期間支給する制度です。
- 生活福祉資金貸付制度: 低所得者や高齢者、障害者世帯に対し、生活費や一時的な資金を貸し付ける制度です。緊急小口資金や総合支援資金といった種類があり、経済危機時には特例措置が設けられることもあります。
- 国民健康保険料・国民年金保険料の減免制度: 収入が著しく減少した場合や失業した場合に、申請によって保険料が減免または猶予される場合があります。
- 公営住宅の利用: 自治体が提供する公営住宅は、比較的安価な家賃で入居できる場合があります。
これらの制度は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会や役所の担当窓口、またはハローワークで相談することができます。「どこに相談すれば良いか分からない」という場合は、まずはハローワークや市区町村の総合窓口で尋ねてみましょう。専門の相談員が、状況に応じた支援制度を紹介してくれます。(相談窓口の具体的な名称や場所は自治体によって異なるため、「お住まいの市区町村役場」「社会福祉協議会」「ハローワーク」といった一般的な案内が適切です。)
経済危機に備える「働き方」の視点
経済危機は、個人の働き方やキャリアについても考える良い機会となります。
- 雇用保険の確認: ご自身が雇用保険に加入しているか、給付の要件を満たしているかを、平時から確認しておきましょう。
- スキルアップ: どんな経済状況でも必要とされる汎用的なスキル(ポータブルスキル)や、需要が高まる分野のスキルを身につける努力は、将来のセーフティネットになります。オンライン学習サービスなども活用できます。
- 情報収集: 経済や雇用の動向に関する情報、利用できる支援制度の情報などを、信頼できる情報源から定期的に収集する習慣をつけましょう。
まとめ:備えがあれば、落ち着いて対応できる
経済危機によって雇用情勢が不安定になったとしても、失業給付をはじめとする公的なセーフティネットの存在を知っていれば、過剰な不安にかられることなく、落ち着いて状況に対応することができます。
今回の記事で解説した「失業給付」は、あなたが万が一の時に利用できる最も身近な制度の一つです。仕組みを理解し、いざという時にすぐ手続きできるよう、この記事を参考に知識として備えておきましょう。
そして、平時から自身の雇用保険の加入状況を確認し、スキルアップに努めること、そして最新の情報を収集する習慣をつけることが、経済危機に強い「働き方」を築くことにつながります。漠然とした不安を具体的な知識に変え、一歩ずつ備えを進めていきましょう。