経済危機に備える!知っておきたい「強い資産」「弱い資産」の種類
経済危機があなたの資産に与える影響を知る
経済危機が発生すると、私たちの生活だけでなく、持っているお金や資産の価値も大きく変動する可能性があります。ニュースで「株価暴落」や「円安」といった言葉を耳にして、「自分の貯金やこれから貯めるお金はどうなるんだろう?」と漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
経済危機によって、物の値段が大きく上がったり(インフレ)、逆に下がったり(デフレ)、会社の業績が悪化して株価が下がったり、持っている外貨の価値が変わったりと、様々な影響が出ます。このような状況下では、資産の種類によって価値の変動の仕方が異なります。
そこで今回は、経済危機のような状況下で、比較的価値が下がりにくいとされる「強い資産」と、価値が大きく下落しやすいとされる「弱い資産」について、初心者の方にも分かりやすく解説します。これらの違いを知っておくことは、経済危機に備え、冷静な判断をする上で非常に役立ちます。
経済危機時に「強い資産」とされやすいもの
「強い資産」とは、経済全体が不安定になり、多くの資産の価値が下がるような状況でも、比較的安定した価値を保ちやすい、あるいは一時的に価値が上昇する傾向が見られる資産のことです。ただし、「絶対に大丈夫」という資産は存在しません。あくまで一般的な傾向として捉えてください。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
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現金・預貯金 経済危機時でも、すぐに使える「お金」そのものの価値は重要です。特に、金融機関が破綻した場合でも預金保険制度で保護される範囲内(一般的には1金融機関あたり元本1,000万円とその利息)の預貯金は、安全性という意味では最も「強い」と言えるかもしれません。ただし、インフレが進むと、現金の「購買力」は低下します。例えば、100円で買えていたものが120円になるような状況では、同じ100円を持っていても買えるものが少なくなります。
- (補足)生活防衛資金として、当面の生活費を現金や安全な預貯金で準備しておくことが推奨されるのは、まさにこの「すぐに使える」「安全性が高い」という強みがあるためです。(生活防衛資金については、別の記事で詳しく解説しています。)
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金(ゴールド) 金は古くから「有事の金」と言われ、経済や社会が不安定な状況になると買われやすい傾向があります。通貨の価値が変動しても、金そのものの価値は比較的安定しやすいと考えられているためです。実物資産であり、世界中で価値が認められている点も強みです。金の価格は市場で変動しますが、株式など他の金融資産とは異なる値動きをすることが多く、分散投資の観点からも注目されます。
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一部の債券(特に国債) 国や信用力の高い企業が発行する債券は、株式などに比べて価格変動リスクが低いとされています。特に経済危機時には、安全性の高い国の国債が買われる傾向(質への逃避)が見られることがあります。ただし、発行体の信用リスク(お金を返せなくなる可能性)や、市場金利の変動によって価格が変動するリスクはあります。
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生活必需品に関連する企業の株式 景気の影響を受けにくい、食料品、医薬品、電力、ガスなどの生活に不可欠なサービスを提供する企業の株式は、経済危機時でも比較的業績が安定しやすく、株価も下落しにくい傾向が見られることがあります。ただし、個別の企業の業績によっては影響を受ける可能性はあります。
経済危機時に「弱い資産」とされやすいもの
「弱い資産」とは、経済危機が発生すると、企業の業績悪化や先行きの不透明感から、価値が大きく下落しやすい資産のことです。これは、経済の変動に敏感に反応する性質を持つためです。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
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景気敏感株 自動車、エレクトロニクス、化学など、景気の変動によって需要や業績が大きく左右される企業の株式は、経済が悪化すると業績が落ち込みやすく、それに伴って株価も大きく下落しやすい傾向があります。
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不動産(特に投資用不動産) 経済危機は雇用や所得に影響を与え、不動産の需要が減少したり、家賃収入が減ったりする可能性があります。また、不動産の流動性(すぐに現金に換えられるか)は低いため、売却したい時に買い手が見つかりにくくなったり、価格を大きく下げないと売れなくなったりすることがあります。居住用の不動産でも、資産価値という点では影響を受けやすいです。
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一部の商品(原油など) 経済活動が停滞すると、工場稼働率の低下などから原油などの商品の需要が減少し、価格が暴落することがあります。ただし、穀物など生活に不可欠な一部の商品は、別の動きをする場合もあります。
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リスクの高い金融商品 信用力の低い企業が発行する債券(ハイイールド債など)や、新興国の株式、複雑な仕組みを持つデリバティブ商品など、高いリターンを目指す分、リスクも高い金融商品は、経済危機時には換金売りが殺到するなどして、価値が大きく下落する可能性が高いです。
なぜ資産の種類によって強弱が出るのか?
経済危機のような状況では、投資家は「リスクの高い資産」を避けて、「安全性の高い資産」に資金を移す傾向が強まります。これを「リスクオフ」と呼びます。
- 「弱い資産」 は、将来の経済状況や企業の業績に大きく依存するため、先行きの不透明感が高まる経済危機時には、リスクが高いと判断され売られやすくなります。需要が減ることで価値が下落します。
- 「強い資産」 は、経済全体の動向から独立した価値を持っていたり(例:金)、多くの人が必要とする安定した基盤を持っていたり(例:生活必需品)、あるいは国がその価値を保証していたり(例:国債の一部)するため、リスクオフの状況で「安全な逃避先」として買われやすくなります。需要が増えることで価値が比較的保たれたり、上昇したりします。
この「リスクオフ」の流れが、資産の「強い」「弱い」という傾向を生み出す大きな要因の一つです。
経済危機に備えるための資産への向き合い方
経済危機時に「強い資産」「弱い資産」という知識をどう活かせば良いのでしょうか。初心者のあなたが今からできること、考えるべきことはいくつかあります。
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自分の資産が何に投資されているかを知る もしあなたが既に投資信託などを利用している場合、その中身がどのような資産(株式、債券、不動産など)に投資されているのかを確認してみましょう。目論見書などで確認できます。自分が意識していなかった「弱い資産」に多く投資されていたことに気づくかもしれません。これは、(図解で示すとどのような資産クラスに投資されているか分かりやすい点)でしょう。
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リスクの取り方を見直す(分散投資の考え方) 「弱い資産」ばかりに集中投資していると、経済危機時に大きなダメージを受ける可能性が高まります。「強い資産」とされるものと「弱い資産」とされるものをバランス良く組み合わせることで、経済危機時の下落リスクを軽減することが期待できます。これが「分散投資」の基本的な考え方です。年齢や今後のライフプランによって、どの程度リスクを取れるかは異なります。
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すぐに必要なお金(生活防衛資金)は「強い資産」(現金・預貯金)で準備する 経済危機で収入が途絶えたり減ったりした場合でも、数ヶ月〜1年程度の生活費があれば、慌てずに済みます。このお金は、いざという時にすぐに引き出せ、価値の大きな変動がない、現金や預貯金として確保しておくことが極めて重要です。
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長期的な視点を持つ 経済は常に変動します。危機的な状況は一時的なものであることが多く、その後回復に向かうのが歴史的な傾向です。経済危機で資産価値が一時的に下がっても、すぐに必要なお金でなければ、慌てて売却せずに長期保有することで、回復を待つという選択肢もあります。(過去の経済危機の後の資産価格の推移などを簡単なグラフで示すと、長期保有の意義が伝わりやすいかもしれません)
まとめ:知識を持って冷静に対応しよう
経済危機のような予測困難な状況下では、感情的にならず、知識に基づいて冷静に対応することが何よりも大切です。今回ご紹介した「強い資産」「弱い資産」という考え方は、経済の変動が自分の資産にどのような影響を与える可能性があるのかを理解し、適切な対策を考えるための一助となります。
もし、ご自身の資産状況や今後の対策について不安がある場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家や、自治体の相談窓口などに相談してみることも検討しましょう。最初の一歩として、まずは自分が今どれくらいの現金・預貯金を持っているのか、そして毎月いくら使っているのかを把握することから始めるのも良いでしょう。スマホの家計簿アプリなどを活用するのも手軽で効果的です。(スマホ家計簿アプリの活用方法などは動画で具体的に見せると、読者は始めやすいかもしれません)
経済危機への備えは、一度やれば終わりというものではありません。日頃から経済やお金に関する情報に関心を持ち、自分の状況に合わせて対策を見直していくことが、漠然とした不安を解消し、将来の経済的な安定につながるでしょう。