【初心者向け】経済危機で「資産価値」はどう変わる?株安・円安・インフレの基本と対策
経済危機が発生すると、ニュースでは「株価が暴落」「円安が加速」「インフレが進む」といった言葉が飛び交います。これらの言葉を聞くと、「自分の持っているお金や資産はどうなるんだろう?」と漠然とした不安を感じる方も多いでしょう。
経済危機時に「資産価値」がどのように変動するのかを知ることは、不必要なパニックを避け、冷静な行動をとるために非常に重要です。この記事では、経済危機と資産価値の基本的な関係、よく耳にする変動の例(株安、円安、インフレ)が私たちの資産にどう影響する可能性があるのか、そしてそれに対してどのように向き合えば良いのかを初心者向けに解説します。
経済危機と資産価値変動の基本的な考え方
経済危機は、社会全体の経済活動が停滞したり、予測不能な事態が起きたりする状況です。このような時、多くの人は将来への不安を感じ、お金の使い方や投資に対する考え方が変わります。その結果、資産の「需要」や「信頼」が変動し、それに伴って価値も変動します。
例えば、先行きが不透明になると、企業業績の悪化が予想され、株を売りたい人が増えます。その結果、株価が下がる、といった具合です。
ここでは、特に個人が関わることが多い資産である「預貯金」「株式・投資信託」「日本円」に焦点を当てて、経済危機時の代表的な変動パターンを見ていきましょう。
経済危機時に起こりうる代表的な「資産価値」の変動
経済危機によって、資産価値は様々な形で変動します。特に知っておきたい代表的な変動を3つご紹介します。
1. 株安(株価の下落)
- なぜ起きる? 経済危機時には、企業の業績が悪化したり、将来の利益が見通しづらくなったりします。投資家はリスクを避けるため、株式を売却する動きが強まります。売りたい人が増え、買いたい人が減ることで、株価は下落します。
- 自分の資産への影響は? もしあなたが株式や、複数の株式や債券をまとめた「投資信託」などを保有している場合、その「評価額」が下がる可能性があります。購入した価格よりも現在の価値が低くなることを「含み損」と呼びます。
- どう向き合う? 株安のニュースを見ると、「早く売って損を確定させたくない」と焦るかもしれません。しかし、経済危機による株安は一時的なものであることも多いです。慌てて売却する(狼狽売り)と、回復する前に損失を確定させてしまうことになります。重要なのは、投資の目的と期間を再確認し、短期的な価格変動に一喜一憂しないことです。長期的な視点で見れば、回復を待つ、あるいは安くなった株や投資信託を買い増す、といった選択肢も考えられます。(ただし、これはあくまで一般的な考え方であり、個別の投資判断はご自身の状況とリスク許容度に基づいて行ってください。)
2. 円安(円の価値が外国通貨に対して下落)
- なぜ起きる? 様々な要因がありますが、経済危機においては、日本の経済への不安や、他の国の金利が上がることで「円よりも他の国の通貨(例えば米ドル)を持っていた方が有利だ」と考える人が増える、といったことが円安の一因となることがあります。円を売って外貨を買う動きが強まると、円の価値は相対的に下がります。
- 自分の資産・生活への影響は?
- 生活への影響: 輸入しているモノ(食料品、エネルギー、海外ブランド品など)の価格が上がります。海外旅行の費用も高くなります。
- 資産への影響:
- 円建て預貯金: 円そのものの価値が下がるため、同じ金額の円を持っていても、以前より少ない量の輸入品しか買えなくなるなど、実質的な価値が目減りしたように感じることがあります(後述のインフレとも関連)。
- 外貨建て資産: 外国通貨で持つ資産(例:外貨預金、外貨建て投資信託など)は、円安が進むと円に換算した時の価値が増加します。
- どう向き合う? 円安は私たちの生活コストに直接影響するため、家計の見直し(特に変動費)が重要になります。また、資産運用の視点では、円だけでなく外国の通貨や資産を持つこと(分散投資)が、円安リスクへの備えになり得ます。ただし、外貨建て資産には為替変動リスクが伴うことも理解しておく必要があります。
3. インフレ(物価の上昇)
- なぜ起きる? 経済危機下でも、世界的な供給不足や円安による輸入品価格の上昇など、様々な要因で物価が上昇することがあります。モノやサービスの値段が全体的に上がるのがインフレです。
- 自分の資産への影響は? インフレが進むと、「現金の価値が相対的に下がる」という影響が出ます。例えば、100円で買えていたリンゴが120円になった場合、同じ100円を持っていても以前と同じ量は買えません。つまり、現金や低金利の預貯金で持っているお金は、額面は変わらなくても「買えるモノの量」が減ってしまうのです。
- どう向き合う? インフレは現金の価値を目減りさせるため、生活防衛資金として必要な分を除いた資産について、「インフレに強い」とされる資産(株式、一部の不動産など)での保有を検討するきっかけになります。ただし、これらの資産は価格変動リスクもあるため、ご自身の状況に合った範囲で検討することが重要です。家計面では、固定費の見直しや、より安い代替品を探すなどの対策が考えられます。
経済危機時の資産価値変動に「冷静に」対応するためのステップ
経済危機による資産価値の変動は、不安を招きがちですが、知っていれば必要以上に恐れることはありません。冷静に対応するためのステップをご紹介します。
-
自分の資産を把握する: まず、自分がどのような資産をどれくらい持っているかリストアップしてみましょう。預貯金、保険、個人年金、投資信託など、すべてを把握することで、何が変動リスクにさらされているかが見えてきます。この棚卸しが、最初の一歩として非常に有効です。
-
情報収集は慎重に、パニックにならない: 経済危機時は、不確かな情報や過度に悲観的な見通しも飛び交います。信頼できるニュースソースや専門機関の情報を選び、感情的な記事やSNSでの過剰な反応に惑わされないようにしましょう。短期的なニュースの動きに一喜一憂せず、なぜその変動が起きているのか、その背景を理解しようと努めることが大切です。(どのような情報源が信頼できるかについては、別途記事で解説しています。)
-
生活防衛資金は手つかずで: 経済危機時は、収入が不安定になったり、予期せぬ出費が発生したりするリスクが高まります。このような「万が一」に備えるための「生活防衛資金」は、資産価値が変動しても安易に崩さないことが鉄則です。最低でも生活費の3ヶ月〜半年分、可能であれば1年分を目安に、すぐに引き出せる普通預金などに置いておきましょう。(生活防衛資金の詳しい考え方や貯め方についても、別途記事で解説しています。)
-
短期的な視点ではなく、長期的な視点を保つ: もしあなたが資産運用(投資)をしているなら、経済危機による資産価値の変動は、短期的なものです。特に積み立て投資などをしている場合は、価格が下がっている時に同じ金額でより多くの口数を買えるチャンスと捉えることもできます(ドルコスト平均法)。長期的な視点を持ち続け、感情的な判断で計画を変更しないことが重要です。
-
専門家や公的機関への相談も検討する: どうしても不安が解消されない場合や、具体的な借金問題などが生じた場合は、一人で抱え込まず、専門家(ファイナンシャルプランナーなど)や自治体の無料相談窓口などを活用しましょう。(経済危機時に活用できる公的支援や相談窓口についても、別途記事でまとめています。)
まとめ
経済危機における資産価値の変動は避けられない現象ですが、そのメカニズムを理解し、冷静な対策をとることで、不要な損失を防ぎ、不安を軽減することができます。
重要なのは、以下の3点です。
- 自分の資産状況を正確に把握すること。
- 短期的なパニックに囚われず、冷静に情報収集し、長期的な視点を持つこと。
- いざという時のための「生活防衛資金」を確保しておくこと。
この記事が、経済危機という不確実な時代を乗り越えるための一助となれば幸いです。まずはご自身の資産の棚卸しから始めてみてはいかがでしょうか。